先日、高井さんの生番組に出演させていただき、色々なお話をしました。
その中で、今、販売しているお米を作っている生産者さんと知り合うきっかけについて少し説明しました。
今日は、それについて、もう少し詳しくお話したいと思います。
まずは、1993年平成5年、お米の大凶作の年。この年、冷害により、お米の収穫が、前年より三割近く少ないほどの被害でした。国の在庫もわずかしかなく、海外から約259万トンを緊急輸入しました。よく言われる、タイ米の輸入事件ですね。実際は、アメリカ・オーストラリア・中国からも輸入しました。
情報はずっと出回っていましたが、消費者には、なかなかその切実さが伝わまりませんでした。
三割少ないということは、三割の人が安い外米を食べてくれれば、自分は、国産米を食べられる、こんな感じでした。
しかし、当時のお米の生産と流通は、それを許すものではありませんでした。
100穫れるお米の内、まず、生産者が40を持ちます。自家消費分です。そして、残り六割を、政府と民間とで流通させます。
実際には、生産者家族は減っており、40もいりません。余剰分は、いわゆる「ヤミ米」として、流通を補完します。それが、お米の流通でした。
この凶作の年も、実は、生産者分の四割は、そのまま手付かずでした。つまり、七割しかとれていないのに、そのうち、四割が生産者の手元ですから、市場には、それを引いた分しか回りません。
誰もが、外米を公平に食べないと、とてもまかなえないのに、政府もマスコミも、そういう大事なことをしっかり伝えませんでした。表向きの数字だけ説明されても、わかりませんよね。
そして、実際の外米流通は、新年から始まることになっていました。新米時期の三か月を国産米だけでこなしたので、新年からの外米比率は、とても高いものになっていました。
そして、新年になって、外米の流通がいよいよ始まるときに、パニックが起きました。
政府が、一月から安定的に公平に米の卸を通じて市場に流す外米の流通が、うまくいかなかったのです。
米屋は、その流通分をあてにして、国産分と合わせての販売を予定していましたので、全く対応できません。
自分だけは、国産米を食べられると思っていた消費者は、いい加減な、煽るだけのマスコミ情報に踊らされて、それは、どうしようもない状態でした。
普段は、量販店で購入している消費者が、米屋なら買えるかもと思って、大挙して押しかけてきました。
東日本大震災のときもそうでしたが、パニックになると、人間、本性が出てしまいますね。悲しいことですが。
ほとんどの米屋が、店先を閉めて、店内を暗くして、脇からお得意さんに配達するためにそっと出かける、ただし、外米抱き合わせですが、そんな状態がしばらく続きました。
さきほど、説明した生産者手持ちの「ヤミ米は」は、収穫時期に、異常な高値で取引されており、新年を迎えるころには、もうほとんどない状態でしたが、面白がるだけのマスコミは、今はない家電量販店の社長が、倉庫に積んである米を仕入れにいく姿を連日流しました。一見すると、大量ですが、実際の商売では、たいした量ではありません。
でも、それを見た消費者は、実態を知りませんから、「誰かがうまくやっている」「自分は損している」と感じてしまいます。
この年の経験が、当店にとっての第一の契機でした。
ただただ、業界の常識の範囲で、通常の流通だけで満足していましたが、これでは、ダメだ。国の政策と量販店を優遇する米卸に振り回されるだけでは、自分のお客様を満足させることができない、と強く実感しました。
そのとき、市内の知り合いのご実家が、お米の生産者で、そこから直接、お米を仕入れることができるようになったのです。
ありがたいことに、そのお米は、実際、非常に良いもので、農薬も少ない、そういうお米でした。
それが、徐々に拡大していって、今につながっています。
二度目のきっかけは、2002年、あの日韓ワールドカップの年です。それは、次回にお話したいと思います。
さて、最初に、1993年、平成5年の大凶作を紹介しました。お米の輸入は大事件として扱われましたが、実は、日本は、かなりの間、お米を輸入していました。
戦前は、併合した朝鮮と台湾からかなりの量を輸入していました。ビルマからもです。当時、サラリーマン世帯では、一日一人当たり3合のお米を食べていました。年間にすると、150キロ以上。今の三倍近い多さです。単位面積当たりの収穫量が少ない当時、輸入しなければ、とても間に合わなかったのです。
戦後もずっと輸入していました。タイ米も輸入しています。平成5年が初めてではなかったのです。
お米の自給を達成するのは、1967年昭和42年です。それから、日本人はお米を食べなくなり、お米が余る時代に突入します。
次回は、二月四日火曜日です。
皆さん、お米について知りたい聞きたいことがあれば、何でも結構です。是非、ラジオフチューズまでメールをお寄せください。