さて、おさらいです。
- ヌカは水質汚濁の元凶である。
- 米の研ぎ汁には、ヌカが含まれる。
- 無洗米には、お米の表面についている「ヌカ」がない。
後の二つは、一応本当のことですので、構いません。
問題は、一番最初の
「ヌカは水質汚濁の元凶」
という点です。
水質汚濁とはなんでしょうか?
具体的には、赤潮。
それは、窒素とリンがもたらします。
正確に言えば、「過剰な」窒素とリンです。
さらに正確に言えば、「過剰な」窒素とリンが、水の中を酸欠にしてしまい、生き物が死んでしまうことです。
名古屋市上下水道局のサイト「赤潮と青潮-水のライブラリー」より
赤潮が発生すると、海中の溶存酸素量が異常増殖したプランクトンの呼吸作用により極端に低下したり、えらをプランクトンが傷めたりして、えらで呼吸している魚介類が窒息死します。
赤潮になるのは水中に栄養分がたくさんあるからです。昭和40~50年ころには工場からたくさんの栄養分が入った水が流されたり、屎尿が直接海に捨てられたりしていましたが、法律でそれらを制限するようになってから、赤潮の発生も減ってきました
[引用終了]
「水中に栄養分」とは、つまり、窒素とリンです。
窒素とリンがないと、食物連鎖は起きません。
必要なんです。
しかし、過ぎたるは及ばざるがごとし。
多すぎても少なすぎても困るんです。
そして、ヌカは、窒素とリンを含みます。
では、やはり、研ぎ汁が元凶なのか?
違うんですね。
上記の名古屋市上下水道局サイトでも書かれていたように、
過剰な窒素とリンをもたらしたのは、
工場排水であり、直接の屎尿廃棄でした。
今は、どうなのでしょうか?
実は、下水なんです。
その内のほとんどがトイレなんです。
窒素で80%、リンで70%。
その他が台所と洗濯・風呂。
つまり、米の研ぎ汁は、わずかの寄与?なんですね。
元凶なるものがあるとすれば、
それは、トイレ!
こういうことを知っている人は、
「米の研ぎ汁が水質汚濁の元凶」
などと聞いたら、笑止千万になるのですが、
消費者のほとんどは、詳しいことは知りません。
某無洗米製造機メーカーの会長?は、
今でも、たまにマスコミに出ます。
業界内で新しい機械の開発では有名ですので。
でも、この方は、無洗米ブームの前に、マスコミでこんなことを言っていました。
「久しぶりに見た海が、汚れていた。ここは、新婚旅行で通った場所だ。米の研ぎ汁が犯人だとぴんときた。」と。
まぁ、こんなことを、インタビューしただけで、裏も取らずに記事にしてしまうマスコミもどうよって話なんですが。
そして、非常に多くの方が、騙されたっていう話です。
生協も、御先棒担ぎをしました。
東西の有名な生協が。
「環境に良い」ことをうたい文句に。
日本生活協同組合連合会に聞いてみたところ、
「単位生協で、そういうPRをしていることは気にしている。連合会としては、根拠のはっきりしないPRには、問題を感じている。」
というようなコメントでした。
でも、各単位生協、やっぱり、販売優先で、ちょっと勇み足だったんですね。
まぁ、ちゃんとした情報を調べれば、すぐにわかる話なんですが、マスコミも消費者も簡単に釣られちゃうということかと。
実は、一つ、とても簡単な情報があります。
それは、
1)米の精米技術が向上して、ヌカの付着がきわめて少なくなっていたこと
2)米の消費が、1960年頃をピークに、ずっと減っていること
つまり、海や閉鎖水域(湖沼)の水質汚濁が問題になるのと反比例して、米の研ぎ汁の中に含まれる窒素とリンは、減りっぱなしだったんです。
本当は、これだけで、
「無洗米の環境PRの真っ赤なウソ」
は証明できたのですが (^_^)