お米は一期一会 いつものお米はないんです!
前回、つまり初回は、店の歴史を紹介させていただきました。今回から、本題のお米にまつわる話をしたいと思います。
本題に入る前に、先日の旅の話を少しばかり。奈良に行ってきました。「山の辺の道」という古代の歴史にも記されている道を自転車で縦走してきました。ずっとずっと行きたかったところで、日本最古の神社とも言われる三輪神社(現 大神神社=おおみわじんじゃ)など、古い由緒ある神社仏閣や古墳を回ったり、万葉集にうたわれたような山々の遠景を眺めながら、古代の息吹を感じてきました。
さて、旅行の楽しみの一つは食事ですが、今回ちょっと残念なことが。それは、ご飯、お米です。だいたい、食事全般はいいのですが、お米がちょっとちょっとというのが多い。一番お金をかけずに、ぐっと美味しくなるのに?といつも思います。
さてさて、今日の本題です。
皆さんは、食べるお米を決めていますか?「うちは、あきたこまち」「うちは、ひとめぼれ」とか。
私が言いたいことは、お米は一期一会!何のことだと思うかもしれませんね。言いたいことは、いつものお米とか、この前のお米はないということなんです。
「そんなことはないはずだ。先日も、いつものお米を買った。味もたいして変わらない」こんな風に思われるかもしれません。でも、やはり、いつものお米はないんです。
まず、基本的なことです。お米はどこで取るか。田んぼです。田んぼには、それぞれの歴史が詰まっています。同じ県内でも、場所が違えば、土の質が随分違います。同じ町にある田んぼでも、山沿いなのか、川沿いなのか、海沿いなのか、そういうことで、土質が違います。粘る土、砂のような土、それだけで、肥料や農薬の効果などが変わります。
そして、生産者がお米を作る田んぼは、家の周囲にまとまってあるわけではありません。ある程度の規模以上になると、他人の田んぼを借りているケースがほとんどです。つまり、田んぼのある場所、土質、そして、これまでどのようにお米が作られてきたか、どのような肥料をどれだけ使ってきたか、千差万別なんです。
つまり、農家さんは条件の異なる田んぼでお米を作らなければいけないんです。そして、条件が違うところで作るお米を同じように仕上げることはそれほどたやすくない。
また、さらに厳密にいえば、同じ田んぼでも水口と真ん中でも違いますし、同じ一本の穂でも、全部一度に実がつくわけではなく、実が出そろうまでには時間がかかります。最初の粒と最後の粒では成熟度も違います。
そして、年ごとに気候も違います。ここ数年の異常気象続きの天候では、なおさら条件が変わります。
ここまで話してきましたように、これだけ条件が違う中で、同じ県の同じ品種だからと言って、同じレベルのお米を期待することは難しいことをご理解いただけましたでしょうか?
買うたびに、同じような性質・品質を期待すること自体ありえないことなんです。お米は一期一会と言ったのは、こういう意味です。
勿論、これは厳密に言えばということです。普通は、ここまで突き詰めて考えることはないでしょう。ただ、本当はこうなのだということを理解していただきたいと思います。
さて、どうせ「いつものお米」がないなら、どうしましょう?
私のお勧めは二つ。
一つ目は、とにかく、色々な品種を先入観なく食べてみること。日本には五百以上のお米品種があります。流通しているのは百くらいだと思いますが。うちの店でも四十くらいあります。少量ずつ複数の品種を買って、とにかく食べ比べる。ご家族に内緒で、毎日違うお米を炊いて、反応を見る。意外なものが美味しかったり、家族の中でも好みが違ったり、色々な発見があると思います。
二つ目は、そうやって出来るだけたくさんの品種をトライしたうえで、ご自身やご家族の好みの品種をさらに厳密化していくことです。産地をしぼり、生産者をしぼり、「うちはこれ」というお米を探してみてください。そこまでいけば、かなり安定した「いつものお米」が楽しめると思います。そして、いつものお米を買いながら、毎回違う品種を少し買って、気分やメニューで食べ比べるというのも一興です。
とにかく、先入観なく、お米を楽しんでください。
お米は一期一会!全ての出会いを大切にしてください。
今週はこれくらいで。
皆さん、お米について聞きたいことがあれば、何でも結構です。是非、ラジオフチューズまでメールをお寄せください。