今日は、特別栽培米についての二回目です。表示についての具体的な話しです。
前回は、理念的な、なんだか漢字ばかりの説明でしたが、今回は、店頭やお米の袋に書いてある内容を説明します。
特別栽培農産物の基本的な概念は、農薬と化学肥料を減らすことです。
農薬とは、化学合成された農薬です。自然由来の物、例えばヌカや牛乳などを、雑草対策や防虫効果として利用することはありますが、それらは除きます。
化学肥料とは、生育にもっとも重要でなおかつ環境負荷をもたらす窒素成分の量を見ます。
これが、減るとどういう良い循環が起こるかは先回説明しました。
そして、ポイントは、どの程度減らせばいいのかです。ずばり、半分以下です。
その程度により、四つの区分に分かれます。
- 農薬も化学肥料も使わない、無農薬・無化学肥料栽培、
- 農薬は使わず、化学肥料は半分以下の、無農薬・減化学肥料栽培、
- 農薬は半分以下、化学肥料は使わない、減農薬・無化学肥料栽培、
- 農薬も化学肥料も半分以下の、減農薬・減化学肥料栽培
の四つです。
無農薬無化学肥料なら有機JAS栽培と変わらないように思えます。同じように、農薬も化学肥料も使わないですから。でも、扱いは違うのです。三年以上続けて、認証団体に認めてもらわなければ、有機栽培とは言えません。あくまで、特別栽培農産物の範疇に入ります。
ここまでが、特別栽培農産物の基本的な内容です。
さらに、細かいことを三つ説明します。
一つ目が、農薬と化学肥料が半分以下ということですが、では、その元となる基準は何かということ。
二つ目は、半分以下でも、色々あるということ。
三つめが、正しい用語の説明です。
まず、一つ目の基準です。
各都道府県には、農産物ごとに、さらには、品種や地域ごとに、化学合成農薬の慣行基準というのがあります。慣行とは、一般的なことを意味します。
それを農薬の点数で表現します。お米の場合、種籾の消毒、苗を作る苗床の土の消毒、除草、害虫対策、病気の対策と五つのポイントがあります。それを全部合計して、例えば、20点と表現します。この場合、使用する農薬の点数が10点以下だと、半減したことになります。どの部分が減っているかは関係ありません。全体で半分以下になっていればいいのです。
同様に、化学肥料、具体的には窒素肥料の使用量が、例えば一反あたり10kgという慣行基準があれば、5kg以下に抑えれば、半減したことになります。
さきほど、この農薬基準が都道府県や品種・地域で異なると言いました。では、どの県の基準値が高いのか?低いのか?
まず、長野と群馬が一番低いです。
関東・四国がそれに続きます。
意外に高いのが、北海道。九州や北陸も高いです。
例えば、長野や群馬の慣行基準は12点。6点以下でないと特別栽培農産物になりません。
新潟は、17から19点。新潟なら特別栽培農産物になるのに、同じ農薬使用量でも、長野・群馬では、そうならない。こういうことがありえます。
日本一律の基準ではなくて、地域の自然環境や、病害虫被害の程度の差もあります。
単に半減と書いてあっても、実際には、都道府県によってかなりの幅があります。
ちなみに、東京都には、野菜の慣行基準はありますが、お米の基準はありません。つまり、東京には、特別栽培米はないということです。
二番目の話は、半分以下でも幅があるということです。農薬や化学肥料を半分以下にしますが、半分以下ですから、五分もあれば、九分もあります。同じ特別栽培農産物の減農薬でも、五分以下から九分以下まで幅があるということです。
今度表示をじっくり見てください。
先の都道府県や品種地域の差も含めると、同じ特別栽培農産物でも、かなりの幅があることがわかります。
三番目は、表示、書き方についてです。
本当は、無農薬とか減農薬、という書き方はしません。実はもっと正確な表示方法があります。
- 無農薬は、「節減対象農薬:栽培期間中不使用」。
- 無化学肥料は「化学肥料(窒素成分):栽培期間中不使用」。
- 減農薬減化学肥料は、「節減対象農薬:当地比何割減」「化学肥料(窒素成分):当地比何割減」と書きます。
表示としてはいいのですが、会話で使うには長すぎるし、わかりにくいですね。どうしても無農薬・減農薬と言う言い方になってしまいます。