今回からダイエットと糖質制限の話をします。
ダイエットとは何でしょう?体重が減ること、脂肪が減ること、スタイルが良くなること。色々ありますが、多分、ほとんどの人の興味は体重でしょう。
本当は、脂肪が減って、筋肉が増えて、体温は上がり、基礎代謝が増えて、しっかり食べても太らない健康的な状態を目指すべきなのですが、どうしても体重を減らすことだけに集中しがちです。
さて、そのような目的に一番合っているのは何でしょうか?ずばり、糖質制限です。
まず、糖質摂取をしないと、体の中で、何が起きるのかを説明します。
人間が生きていくためには、食事から摂取した栄養素から作るエネルギーが必要です。
全ての体の機能にエネルギーは使われます。エネルギーと聞くと、筋肉を使うことと思いがちですが、あらゆる細胞レベルの活動にエネルギーは必要です。息をしているだけでも必要です。寝ているときでも必要です。
その中でも、脳は重要です。全エネルギーのうち、約20%も使います。寝ているときも脳は動いてエネルギーを使っています。本当は、体全体で説明すべきですが、ここでは、脳を中心にお話します。
脳のエネルギー源になるのが糖質から作られるブドウ糖で、一日あたり120gを使います。もし、糖質を摂取しないと、肝臓に蓄えられたグリコーゲンが使われます。これを肝グリコーゲンと言います。そして、肝グリコーゲンの許容貯蔵量は100g。糖質を摂取しなければ、最大でも一日持たないのです。
つぎに、肝グリコーゲンの残量が20gを切ると、肝グリコーゲンの枯渇を防ぐため、糖新生という体の機能が働きます。蛋白質つまりアミノ酸を主な材料として糖質を作ります。脳はそれを優先的に使います。
しかし、糖新生の能力には限界があります、糖新生が作る糖質の量は一日に80g程度と言われています。つまり、糖新生だけでは40g不足します。糖新生のみで脳のエネルギーだけでも100%補給することは不可能なんです。脳は体全体の20%のエネルギーを使いますから、さらに残り80%分のエネルギーも必要です。
アミノ酸による糖新生で対処できなくなると、体は緊急非常処置として、中性脂肪を分解して出来るケトン体を利用します。
この一連の動きが、糖質摂取をやめた際の体の反応です。
これを体重の変化という観点で見ると、こうなります。
まず、体に蓄えらえれたグリコーゲンが枯渇します。さきほどご説明した肝グリコーゲンに加えて、筋肉が蓄えた筋グリコーゲンもあります。これも、筋肉の動きで消費されます。グリコーゲン全体で400g程度と言われています。そして、グリコーゲンは三倍の水を抱えています。グリコーゲンが消費されると、全体で1.6kgがなくなります。大事なことは、脂肪が減ったのではなくて、多くは水分だということです。
これが、最初の体重減少のメカニズムです。
次に、糖新生です。タンパク質から糖質を作ります。材料は、筋肉です。筋肉を分解して必要な糖質を作ります。ですので、分解された筋肉分だけ、体重が減少します。
最後に、ケトン体です。材料は、中性脂肪です。ここにきて、やっと脂肪の出番です。当然、使われた分だけ体重は減少します。
では、最後のケトン体を利用した体重減少がどの程度進むかということですが、試算してみます。
まず、今までの摂取カロリーは適量2000キロカロリー。適量とは、使うエネルギーと摂取するエネルギーのバランスが取れていて、太りもしないし、痩せることもない状態と仮定します。糖質はそのうち、50%とします。そして、糖質を絶ちました。タンパク質と脂肪は、それまでと同量食べています。つまり、アンダーカロリーです。
糖質がないですから、脂肪を使います。糖質に頼っていた毎日1000キロカロリーのエネルギー分を補います。
脂肪のエネルギーは、1kgで7000キロカロリー。つまり、毎日1000キロカロリーを今までより余計に消費しますから、1kg痩せるのに七日かかることになります。
ここで、体重の変動をおさらいします。
まず、グリコーゲンが枯渇して、1.6キログラムが減ります。そのうち、1.2キログラムは水分です。
次に、糖新生で筋肉が減ります。これは、ケトン体の回路が動くまでです。実際には、糖新生は毎日、食時間の飢餓状態で起こっているのですが、ここでは単純に一日と考えます。80gの糖新生をするために、筋肉のタンパク質20gと体脂肪180g、合計200gが使用されます。
グリコーゲン枯渇と糖新生で、1.8キログラム減り、それから、七日ごとに中性脂肪が1kgずつ減っていきます。
かなり単純化した姿ですが、これが糖質制限したときの体重変動です。すぐに減るのが水分と筋肉。約二キロ減りますので、効果を実感できます。そして、ゆっくり脂肪が減っていきます。これが、糖質制限の効果です。
次回は、糖質制限によるダイエットの問題点です。